聴いて、歌って、聴いて、聴く。
歌の練習をするときに、つい頑張って何度も何度も歌っちゃう方がいます。
忙しい合間を縫って限られた時間の中、わざわざスタジオに入って個人練習するわけですから、それはもう時間が惜しいですよね。一回でも多く歌って納得のいくテイクに近づけたいでしょう。
まあ僕の生徒さんには口が酸っぱくなるほど「録音」の大切さをお伝えしていますので、どの方も個人練習の時には携帯やレコーダーで自分の声を録られています。でもほとんどの方は、その日に録音したテイクを帰りの電車、もしくはお家で確認されているようです。
でも、できればそれはスタジオにいるときに大きな音で確認した方が良いと思います。
歌い終わった直後は、自分の歌がちょっとだけ上手く思える
スタジオで何度も何度も歌って練習していると「よし、イケてきた!」って思えたのに、家に帰ってその日のテイクを聴いたら「あれ?こんなんやったっけ?」と思うことがよくあります。
これって耳・・というか脳みそが自分の歌に慣れてしまってある種の「心地よさ」を生んでしまう現象だと僕は勝手に解釈しています。
スポーツではフォームを安定させるために同じことを延々繰り返しやる「基礎練」なんかは面白くもなんともないものですけど、「歌の練習」の場合は、そんなに面白くないはずの「発声練習」であっても、大声を出してるだけで結構気持ちよかったりします。
この「声を出す」=「気持ちいい」というのが意外と曲者で、特に歌い終わった直後はストレスが発散されてるからか、先に書いたように脳みその感覚が自分の声に馴染んでしまうからか、ちょっとだけ上手く歌えてるように感じるんです。
聴いて(原)→ 歌って → 聴いて(原)→ 聴く(録音)
前のブログで「自分の歌の良さに気付くことの大切さ」を書きましたが、上に書いたような歌った直後に感じる「良さ」は、心地よさが生み出す錯覚ですので別物と考えてください。
この錯覚が結構やっかいな邪魔者ですので、これの取り除き方を・・・。
- STEP1原曲(お手本)を聴く
まず歌う前に原曲(お手本)を聴き、脳内の感覚をしっかりと理想のサウンドで書き換えます。
- 歌います
スマホやICレコーダーを使って自分の歌を録音しましょう。
- STEP3もう一度原曲(お手本)を聴く
これによって声出しで興奮している脳は落ち着きますし、再度感覚をリフレッシュできます。
- STEP4さきほど歌った自分の歌の録音をチェックします。
歌を上手くするには、絶対的に「聴くチカラ」を鍛える必要があります。僕の場合は1時間スタジオに入っても、歌ってる時間は正味15分くらい、準備と片付けが5分として、あとの40分は聴いている時間です。
まずはとにかく「聴こえる耳」を養おう!
歌を歌うためには「技術」が必要です。特にゴスペルなどの黒人音楽は歌い方にルールがあって、それに乗っ取って歌わないとそれっぽくは聞えません。
やはり歌が上手い人というのは「聴く能力」が優れていると思います。適当な解釈ではなく、しっかりと違いの分かる耳を持っているからこそ、それを練習課題として捉えることができます。
いい歌を歌うためには、最終的には「感性」だと思っています。そしてその「感性」を養い、持続させるのは何歳になっても「違いが聴こえる耳」を持ち続けることだと思います。